ギターに打ち込む
製造部圧延課 ハンドルネーム トミエマ(20代・男性)
ギターにはじめて触れたのは、まだ小学生低学年のころでした。好奇心旺盛な子供だった私は、自宅に置いてあった父の古いアコースティックギターに興味を持ち、いつも父の目を盗んではギターを手に取り演奏の真似事をしていました。父は、そのギターを学生時代に知人から譲ってもらった大切な物だからと、あまり私に触らせたがりませんでしたが、父が何度ギターを隠しても見つけて持ってきてしまう私に根負けしたのか、少しずつギターの弾き方を教えてくれるようになったのです。最初は演奏の仕方など全く分からず、適当に音を鳴らしているだけだった私ですが、父に簡単なコードや音階の奏で方を教わり練習を始めると、音楽をやっているんだという実感が沸いてきてギターを弾くことがどんどん楽しくなっていきました。友人と遊ぶ約束のない日などは学校での授業が終わると走って家に帰り、拙いながらも当時流行っていたJ-POPの曲を夢中になってコピーしたり、弾き語りしたりしたことを覚えています。 しかし、中学、高校時代になると、友人達と過ごす時間の方が楽しいと思うことが増え、部活で忙しくなったこともあってギターを練習する時間は極端に少なくなっていきました。もちろん、ギターを嫌いになった訳ではなかったし、音楽活動やバンド活動に打ち込んでいる友人を見ては嫉妬のような感情を抱くこともありましたが、なんとなく行動できずにもどかしい気持ちのまま日々を過ごしていたように思います。 左手指が物語る成長 社会人になって数年が経ち、私はほとんどギターを弾くことがなくなっていました。そんなある日のことです。知人でピアノ教室の講師をしておられる方から突然「うちの教室の定期演奏会に特別枠で参加してみないか?」とお誘いを受けました。ピアノ教室に通っている私の友人から、私がギターを弾くのを聞いたのだということでした。その時、私のギターの腕前は人前で披露できるようなレベルではなかったと思うし、これまで発表会等に出た経験もなく、ましてやピアノの発表会にギターで参加するという状況には正直無理があると思いました。すぐに断ろうと思ったのですが、よく考えるとこれはもう一度ギターを真剣に始めるチャンスだとも思ったのです。 幸い演奏会までは一年程度の期間があったので、一生懸命に取り組めば何とかなるかもしれないと思い、結局参加をすることにしました。準備期間の間、私は2〜3時間の練習を可能な限り日課としてこなしました。ほとんど独学で、分らない部分はギター教室に通って教えてもらうことにしました。ギターを弾かなくなって柔らかくなっていた左手の指先は、1年の間にすっかり硬くなり、演奏技術も以前に比べればかなり上達していました。 演奏会の日、私は夜勤明けで会場に向かい本番に臨んだのです。結果は…残念ながら「大成功!!」とはいきませんでした。大勢の観客が見守り、シーンと静まり返った会場の中で演奏することは想像以上に緊張し、練習で難なくこなしていたフレーズでミスをしてしまったのです。その後は、演奏を終えることで頭が一杯になってしまいましたが、演奏を終え、観客の拍手の音が聞こえた時にはとても安心した記憶が残っています。人前で何かを発表するという機会が普段あまりない私にとって、この演奏会は非常に良い経験になりました。 今現在は、通っているギター教室で近々行われる発表会に向けて練習の真最中。演奏曲はピアノの演奏会で演奏した曲と同じものですが、今度は準備万端で挑み大成功と思えるような演奏をしたいと思っています。そして、機会があればピアノ教室の発表会にはもう一度参加し、リベンジ出来ると良いなとも思っています。