3月は冬から春に切り替わる季節。北陸特有の冬の空から時折穏かな日差しが差し込み、春の芽吹きを感じる3月は、私にとっても待ち遠しい季節です。春を求めて、上越地方のふきのとう狩りから始まり、4月には京都、5月には信州、東北へと桜前線を追いかけて旅をするのが毎年の恒例となっています。
　私は昔から家にじっとしている性分でないので、休日はほとんど家にいることはなく、年間十数回は県外へ出かけるほどの旅好きです。そのためか、旅先での出会い話や大恥をかいた失敗談のエピソードが数多くあります。今回その一つを紹介したいと思います。
　
　数年前の3月、妻と息子夫婦と4人で2週間のヨーロッパに旅行に行った時の事。その時はツアー旅行ではなくルートや飛行機、ホテル、現地での移動チケットの予約等、全てを自分たちで決めて行く個人旅行でした。イタリアを巡りドイツ、オーストリアの順で周る予定でしたが、ドイツでの3日目、突然息子夫婦がどうしても別の所へ行きたいため2日間別行動しようと言い出しました。我々二人をおいてとんでもないこと！と思いましたが、妻は手と口とガイドブックがあれば何とかなるでしょうと落ち着いて答え、最終的には私も了解し別行動することになりました。
　
妻がリードの二人旅

　次の日、私たち二人だけでのミュンヘンからオーストリア国境近くのフッセンまで6時間、列車を乗りついでの旅が始まりました。今から思えば、言葉も地理もわからないのによく行ったと思います。
　列車のフリーチケットは買ってありましたが、案の上、駅でどの列車に乗ればよいかわかりません。また、時刻表が読めないため立ち往生する始末。しかしながら妻は平然としたもので、片言の英語とガイドブックを見せながらの身振り手振りで現地の方に尋ねます。その方も親切な人で、紙に書いて説明してくれた上に、ドイツ語で書かれた説明だけでは分らないだろうと、駅のホームまで案内してくれるではありませんか。私はこのとき、親切な彼へ感謝すると同時に、妻のたくましさを知ったおもいでした。そんな訳で二人だけの1泊2日の珍道中でありましたが、何とかミュンヘンに戻ることができ、息子たちとも合流することが出来ました。

ウィーンでの路上芸人

　私たちにとってヨーロッパ旅行は2回目でしたが、古代ローマの遺跡、中世の面影を残すフレンツェ、ドイツ・ライン川の古城巡り等、どこへ行っても素晴らしい風景や文化の体感にあらためて感動するばかりでした。また、地元の人達からも気さくに話しかけられることもよくあり、妻も旅行にきて本当に良かったと喜んでくれました。私にとっても久しぶりの女房孝行にもなりました。その後、この旅行がきっかけで翌年にも再度3回目のヨーロッパ旅行、また、昨年は九州と中国地方一周に出かけ、今年は北海道一周を計画しています。この計画には子供たちも呆れて返っていますが…。

オーストリア　ウィーン夜景

　
　色々な方から、なぜそんなに旅にでかけるのとよく聞かれますが、素晴らしい風景に出会ったときの感動、旅先での人情を知った時の感動、その土地の文化にふれた時の感動、その感動を味わう為、旅に出かけるんだよと答えています。
　私は今年65歳を迎えますが、これからも健康である限り感動を求めて旅をしたいと考えています。そして｢感動と感謝の人生が送れるように、我が人生に乾杯と言えるように」と願う今日このごろです。