小さな絆
技術部敷設課 ハンドルネーム おじさんパパ(60代・男性)
3月は卒業シーズン。この時期になると思い出す言葉がある。それは10数年前、娘の女友達が私に言った言葉だ。 彼女と娘は中学から仲が良かった。 そんな彼女が、高校1年生のある日、突然娘を訪ねてきた。彼女は、泣いている。家に入れてよくよく話を聞くと、どうやら彼女の両親が急に離婚することになり、自分はどうすればよいのかわからないというのだ。まだ10代で思春期真っ盛りの彼女にとっては一大事であり、悲しみのあまり「家出をしたい」という。 あのとき、私が彼女に何を言ったのか忘れてしまったが、彼女の話を最後まで聞いてやり、いくつかのアドバイスをしたのだろう。ただそれだけのことである。 そんな彼女が高校を卒業し、私を訪ねてきて言ったのは、「私がどん底の気持ちでいたとき、パパさんが真剣に話を聞いて、相談に乗ってくれたことは生涯忘れないよ。ありがとう」という言葉だった。それほどのことをしたとは思っていなかったが、彼女にとってはとても嬉しかったのだろう。 毎年届くプレゼント 「パパさんいるの?!ケーキ、買ってきたよ」 あれから10数年間、彼女は毎年クリスマスになるとケーキを持って訪ねてくる。あのときのお礼だと、3人の子供の母親になった今でも続けてくれているプレゼントだ。 過去に何度か「娘も嫁いで出て行ってしまっているのに…気を遣ってくれなくてもいいんだよ。」と言ったこともあるが必ず毎年持ってくれて、本当に律儀な女性だと思う。そして、それが酒などでなく、大人になった今でもケーキなのだから、実に可愛らしい。私は親としてはダメ親父であるが、彼女がケーキを持ってきてくれるたびに、その顔をみて親心を掻き立てられるのだ。 有名な旧制高等学校の寮歌に、「君が愁いに我は泣き 我が喜びに君が舞う」という一節があるが、そんな感情に近いものがある。あの卒業の日を思い、“パパさん”としては「彼女に幸あれ」と、強く思う。